上(政府)が据えたんだ、あたしたちに否やはない。そんなことが出来るンならね、3年も前に誰かがしてる。
前の城主(かみ)さんが追い出した者が戻る許可を今の城主(かみ)さんは与えた。
戻るだろうさ、居場所がない人間はね。当て所なく3年。
有り難がる連中ばかりじゃない。前の主さんはそう降りて来なかったからなァ、町の連中の多くは顔を見ちゃいないんだ。
なら、一緒と思う者だって居る。今更と思う者も。今の城主(かみ)さんは大変だろうさ。
ただこの手のつけ方を見ると、きっと今の城主さんは御構い無しだ。やりたいことを真っ直ぐにやるおひとなんだろ。
出来なきゃ回り道をしてでもきっとやる。女であるとか若さだとか、きっとあのおひとには邪魔なんだ。いやァそれともそれすら使うのかねェ、そこまでは知らないがなァ。
あたしはあのおひとのその“速度”についていけない輩をどうするのかを見てるよ。
真っ直ぐ先頭切って走る綺羅星に追い付けず、取り残された連中をどうするのかをね。
光の軌跡に足が竦んで近寄れない、今まで端ばかりをさ迷って、そこに居ることも赦されなかった者に、道をつけた者は果たして振り向いてそいつらの話を聞いてくれるのか。
声も出せない者を呼ばうことは出来るのか。
…干されるのはもう飽きた。
城主(かみ)の仕事をごろうじろ、だ。
PL注
物干し屋は3年間、この町の中で「流民(改史難民)、幽籍者の伝承を書き留める」仕事を干されています。
その状況に飽いている。
だから城主が流民(改史難民)を招き入れたことは喜ばしい。けれどエナガの改革速度に追い付けない人間は必ず居ると踏んでいる。
一見有用には見えない流民をどうするのか、それを彼はじっと見ています。観察者と言って良い。
為政の取りこぼしもまた絶対に出る。だけどそれがひどく多いときに彼がどう出るかはまだ決めていません。
(のちの展開でエナガは流民出の技術などを取り込むので、彼がどう出るかはそこまで考えなくても良い気はします)
3年前に彼らを守れなかった、までは思っていません。
女であり若いことで行動のブレが出てまた流民たちを振り捨てていかないかは少し懸念事項。でもどう見てもマッドな研究者だし行動自体は今後もブレないんじゃね?とも思ってます。
まとめ:
女で若造であることには物干し屋自身は拘っていない。しかし、改革者であることに懸念を抱いている。
その改革の速度についていけないのは大体が情報に弱い者たちや、新しいものに怖気付いた者たちだ。
彼らのことを彼女は気付くことが出来るのだろうか。
観測者。エナガを城下から観て測る者。